遠山昇司 フェイクシンポジウム
『マジカル・ランドスケープ』
シンポジウム/演劇
2019年2月2日[土] 18:00開演、3日[日] 15:00開演 ※開場は開演30分前を予定
会場|京都市北文化会館 ホール
Photo: Naoko Tamura
現実と虚構が混ざり合う先に見えてくる、
京都の新たな風景

映画監督でありながら、誰かの水曜日の出来事が書かれた手紙を転送、交換する参加型アートプロジェクト「赤崎水曜日郵便局」(2014年)のディレクターを務めるなど、そのマルチな才能が注目される遠山昇司。風光明媚な京都からは少し外れた何気ない場所に張り付く物語=風景の数々。公演では、一見して脈略のないそれらの地点を想像力によって結びつけ、京都のまちの在り様を周縁から考えるシンポジウムを開催。しかし、実際の研究者、作家らが登壇して行うこのシンポジウムは遠山によって演出されているパフォーマンスでもある……どこまでが現実でどこからがフィクションか?現実と虚構が混ざり合う「フェイク」シンポジウムから、京都の新たな風景を浮かび上がらせる。

構成・演出・出演|遠山昇司 
ドラマトゥルク・出演|福島幸宏(京都府立図書館)
出演|惠谷浩子(奈良文化財研究所景観研究室研究員)、大月ヒロ子(IDEA R LAB 代表)、芹沢高志(P3 art and environment 統括ディレクター)、影山裕樹(編集者)、田村尚子(写真家)、星野裕司(熊本大学准教授)、松田法子(京都府立大学院准教授)/玉井夕海
地域ドラマトゥルク|神田真直、丸木伸洋、室谷智子
協力|京都府立図書館
舞台監督|杉浦訓大
照明|葭田野浩介(RYU)
音響|佐藤武紀
映像|加藤信介

2月2日(土)18:00~19:30

第一部 基調講演
『「京」の輪郭』 惠谷浩子(奈良文化財研究所景観研究室研究員)

第二部 パネルディスカッション
モデレーター
福島幸宏(京都府立図書館)

パネリスト(50音順)
惠谷浩子
大月ヒロ子(IDEA R LAB代表)
影山裕樹(編集者)
遠山昇司(映画監督)
星野裕司(熊本大学准教授)

第三部 マジカル・ランドスケープ
玉井夕海

2月3日(日)15:00~16:30

第一部 基調講演
『北山の海』 松田法子(京都府立大学准教授)

第二部 パネルディスカッション

モデレーター
福島幸宏(京都府立図書館)

パネリスト(50音順)
影山裕樹(編集者)
芹沢高志(P3 art and environment 統括ディレクター)
田村尚子(写真家)
遠山昇司(映画監督)
松田法子

第三部 マジカル・ランドスケープ
玉井夕海

演出ノート

今も見える。
右京区のとある駐車場で僕は立っていた。
2018年8月21日、17時50分、空に虹が出ていた。
魔法がかけられたように様に束の間、姿を現し、ひと時の奇跡とも言える高揚をもたらしたその風景は、消えていく。
悲しくはない。
いつかまた現れる虹の風景は、今のところ見ることができないが、いずれ訪れる。
そして、いつか見る風景の兆しは想像力によって見つけることができる。

僕は今回、京都のまわりをめぐった。山科・伏見・西京・北・右京という場所を旅した。
虹を見たのはこの日だけだったが、あの駐車場、そして虹の始まりと終わりが繋がっている様に思えた家々の屋根が記憶に残っている。
私たちの記憶の大半は、その場所への記憶ではないだろうか。
僕個人の愛しい記憶でもあり、風景がいまだに僕には見えている。

フェイクシンポジウム『マジカル・ランドスケープ』では、舞台上にて登壇者たちの記憶の風景が束の間、浮かび上がるだろう。
その確信めいた記憶の風景は虹の様に重なり合い、散乱していき、新たな京都の風景として見出される。それが、見えてくる。

花房観音+円居挽
『恋墓まいり・きょうのはずれ——京都のエッジを巡る二つの旅』

公演とセットで京都の街を楽しめる書籍を制作。京都を舞台に多数の著作を発表してきた気鋭の小説家・花房観音と円居挽による書き下ろし小説と、今回遠山がディレクションし独自に編まれた京都の風景とガイドが交差し、京都の郊外の新たな楽しみ方と歩き方を提示します。

企画|CIRCULATION KYOTO
編集・企画|マジカル・ランドスケープ研究会+千十一編集室
写真|田村尚子
デザイン|加藤賢策+岸田紘之(LABORATORIES)
発行元|千十一編集室
A6判(文庫判)、並製/298ページ(カラー4ページ、モノクロ294ページ)

詳細はこちら http://sen-to-ichi.com/publication/koi_kyou/

※チケット購入者には公演当日に配布します

遠山昇司|映画監督、プロデューサー。1984年熊本生まれ。東京都在住。最新作『冬の蝶』は若手監督の登竜門である第33回テヘラン国際短編映画祭アジア・コンペティション部門グランプリを受賞。映画監督として着実にキャリアを積む一方、誰かの水曜日の出来事が書かれた手紙を転送、交換する参加型アートプロジェクト「赤崎水曜日郵便局」のディレクター・局長を務め、2014年度グッドデザイン賞を受賞。舞台・展示・アートプロジェクトなどの企画・プロデュースを手がけ、そのマルチな才能が注目される。2020年春に開催される「さいたま国際芸術祭2020」ディレクター。

花房観音|小説家、バスガイド。1971年兵庫県豊岡市生まれ。京都市在住。2010年、第一回団鬼六賞大賞を京都の和菓子屋を舞台にした「花祀り」(幻冬舎文庫)にて受賞。五山の送り火を題材にした「女の庭」(幻冬舎文庫)、京都の旧遊郭に生きる女たちを描いた「楽園」(中公文庫)、都の豪奢や屋敷で起こる怪異連作集「鬼の家」(角川書店)など性愛、ホラー、怪談、時代小説などを多数執筆。京都観光文化検定2級を所持する現役のバスガイドでもあり、小説以外にも「おんなの日本史修学旅行」「愛欲と情念の京都案内」などの歴史、京都関係の著作がある。

円居挽|小説家、推理作家。1983年奈良県生れ。大阪市在住。京都大学卒業、京大推理小説研究会出身。2009年、「丸太町ルヴォワール」(講談社)で長編デビュー。その後、「烏丸ルヴォワール」、「今出川ルヴォワール」、「河原町ルヴォワール」と京都の中心地を舞台にしたミステリー「ルヴォワール」シリーズを次々と発表。新進気鋭のミステリー作家として注目を集める。その他著書に、『シャーロック・ノート』『京都なぞとき四季報 町を歩いて不思議なバーへ』『日曜は憧れの国』などがある。

影山裕樹|1982年東京生まれ、早稲田大学第二文学部卒業後、雑誌編集部、出版社勤務を経て独立。アート、カルチャー書のプロデュース・編集、雑誌やウェブ媒体での執筆活動の他、展覧会やイベントの企画・ディレクションなど幅広く活動を行なっている。2018年、合同会社 千十一編集室を設立。著書に『大人が作る秘密基地』(DU BOOKS)、『ローカルメディアのつくりかた』(学芸出版社)などがある。近年の主な仕事に、「十和田奥入瀬芸術祭」(2013)エディトリアル・ディレクション、「CIRCULATION KYOTO」(2017)プロジェクト・ディレクター、ウェブマガジン「EIDT LOCAL」(2017-)企画制作など。青山学院女子短期大学非常勤講師。

福島幸宏|京都府立図書館 企画総務部企画調整課。公文書館/図書館/歴史学。京都府立総合資料館では、近代行政文書の文化財的修理・昭和戦前期資料の公開・京都市明細図の活用・東寺百合文書の記憶遺産登録・CC BYでのweb公開を担当し、Library of the Year 2014大賞を受賞。京都府立図書館では、サービス計画の策定・システム構築・企画・調整・広報などを担当している。

惠谷浩子|独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所・研究員。造園学を専門としつつ、文化的景観の基礎的かつ体系的な研究に従事する。また、京都や宇治、四万十川流域をはじめとする全国各地の文化的景観の調査研究に携わり、土地の「らしさ」をとらえる視点とその持続のあり方を探求している。著書に『地域のみかた-文化的景観学のすすめ』(共著)、『京都岡崎の文化的景観調査報告書』(共著)、『遺跡学の宇宙―戦後黎明期を築いた13人の記録』(共著)など。平成29年度日本造園学会田村剛賞、日本イコモス奨励賞2018を受賞。

大月ヒロ子|板橋区立美術館学芸員を経て1986年に独立し、IDEA,INC.設立。大阪府立大型児童館ビッグバンの総合プロデューサー、東京国立近代美術館客員研究員など歴任。2013年に日本で初めてのクリエイティブリユース(廃材や端材、見捨てられた空間や土地を、人のクリエイティビティーを使って、新たな価値を持ったものに作り変える)の拠点IDEA R LABを開設し、代表を務める。2017年秋より、おかやま文化芸術アソシエイツのプログラムコーディネーター。著書に『クリエイティブリユース──廃材と循環するモノ・コト・ヒト』(millegraph)他多数。グッドデザイン賞、キッズデザイン賞、国際児童図書評議会賞、福武文化奨励賞受賞。

星野裕司|東京大学大学院工学系研究科修了。専門は景観デザイン。株式会社アプル総合計画事務所を経て,現在熊本大学くまもと水循環・減災研究教育センター准教授。社会基盤施設のデザインを中心に,都市,河川,公園,農村,震災復興など,様々な地域づくりの研究・実践活動を行う。主な著書に『風景のとらえ方・つくり方 九州実践編』(共著、2008)など。主な受賞に、土木学会論文奨励賞、2012年グッドデザイン賞サステナブル・デザイン賞(曽木の滝分水路)、都市景観大賞(熊本駅周辺都市デザイン)など。

松田法子|京都府立大学大学院生命環境科学研究科 准教授。建築史・都市史。近年は建築や集住体のフィールドワークを、地形・地質・水系・地域史などを複合した広域なエリアスタディとして取り組み、これを領域史として提起する。現在の研究テーマの2本柱は、「地質からみる都市と集落」と「汀の人文史」。単著に『絵はがきの別府』(左右社、2012)、共編著に『危機と都市 -Along the Water』(同、2017)、『熱海温泉誌』(熱海市、2017)など。芸術系プロジェクトに、「地-質からみるさいたま」(さいたまトリエンナーレ、2015-16)、『場所、芸術、意識』(明治大学大学院理工学研究科総合芸術系、2018)、など。北山杉の林業景観(仮称)文化的景観研究会委員(京都市、2017-)。日本観光研究学会賞ほか受賞。

芹沢高志|P3 art and environment 統括ディレクター。神戸大学数学科、横浜国立大学建築学科を卒業後、(株)リジオナル・プランニング・チームで生態学的土地利用計画の研究に従事。その後、1989年に P3 art and environment を開設。場所を特定せずに、さまざまなアート、環境関係のプロジェクトを展開している。横浜トリエンナーレ2005キュレーター、別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」総合ディレクター(2009~2015年)、さいたまトリエンナーレ2016ディレクターなどを歴任。現在、デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)センター長。著書に『月面からの眺め』(毎日新聞社)、『別府』(別府現代芸術フェスティバル『混浴温泉世界』実行委員会)など。

田村尚子|写真家。徳島生まれ、京都在住。初個展「この世の外へならどこへでも」抽象カラー写真作品を皮切りに、2014年パリ国際芸術都市制作滞在後の「タウマタ」(Taka Ishii Gallery Paris2015)など写真を中心に演劇パフォーマンスや映像インスタレーションを国内外の美術館やギャラリーにて発表。アート作品はサンフランシスコ近代美術館他に収蔵される。著書に『Voice』(青幻舎 2004)、 仏のラ・ボルド精神科病院の日常を捉えた『ソローニュの森』(医学書院 2012)、『Thaumata/タウマタ』(T.I.G.Paris / Tokyo 2015) など。京都を拠点にヴュッター公園/Vutter Kohenの代表としても活動している。

玉井夕海|ウタウタイ。東京藝術大学建築科在学中、宮崎駿アニメーション演出家養成講座『東小金井村塾2』修了。声優として映画『千と千尋の神隠し』リン役、テレビアニメ『亡念のザムド』紅皮伊舟役。2013年渋さ知らズメンバーとなり、2015年、渋さ知らズ主宰・不破大輔プロデュースによるアルバム『MOTHER SUN』(FUWA WORKS&地底レコード)リリース。遠山昇司とのタッグは、2012年映画『NOT LONG,AT NIGHT』(主演)、2013~2016年アートプロジェクト《赤崎水曜日郵便局》(ポストマン)、2017~2018年《ポイントホープ》(出演・歌)に続いて4作目。